通信制大学と聞くと、何やら胡散臭いイメージやレベルの低いような印象があるように思えます。
実際に口コミやレビューを見ると、「Fラン未満」や「就職に使えない」などという決して心地よくはない意見が数多く出回っています。
本当にそうなのでしょうか。
インターネットが発達している今日、通信制の教育課程はより一層注目されるようになってきている気がします。
実際、名門大学である早稲田や慶応などの通信課程でも数多くの学生が学んでいて、通信制大学は今後より一層注目される大学の「新しい学び方」担っていくと感じます。
私は通信制大学のなかで恐らく最も知名度の高い放送大学を卒業した後、ドイツで新卒就職をしました。
だから通信制大学の卒業では就職は不可能といった意見は私の経験から間違いであると証明できます。
でも確かに言えることは、全日制の大学卒業と比較するとやはり通信制大学卒業からの新卒就職がとても難しいことには変わりありません。
だとしても、通信制大学で能動的に学び、卒業することは決して簡単なことではありません。無事に卒業することができればそれは一生涯使える学位として残ります。
この記事では、実際に放送大学を卒業して海外新卒就職をした私の経験を基に、放送大学がどのような大学なのかを紹介したいと思います。
これから通信制大学で学ぼうと考えている方、すでに学び始めていてこれからの進路を考えている方の参考になれば幸いです。
放送大学とはどんな大学なのか?
まずはじめに、放送大学とはどんな大学なのかを紹介します。
放送大学は1981年に創立した私立大学ですが、元々は国(日本)が放送大学学園法という個別の法律を制定し設立した国による私立大学です。大学の種類的に現在は私立大学ですが、国立大学の流れを汲んだ大学です。
学生数、全国で約9万人!
さまざまな世代、職業の方が意欲的に学んでいます。
30代~40代を中心に、10代から90代まで、幅広い年代の方が放送大学で学んでいます。
職業もさまざま。
資格取得を目指す看護師や教員の方が多いのも特徴です。
放送大学は、日本における生涯学習の中核としてどなたにも、広く門戸を開放しています。
放送大学公式ウェブサイトより引用:https://www.ouj.ac.jp/hp/gaiyo/who.html
放送大学の公式ウェブサイトを見ると、幅広い年代の学生が学んでいることがわかります。
放送大学は生涯学習のための大学?
公式サイトにもありますが、放送大学は生涯学習のためのカリキュラムを中心に扱った大学です。
在籍している学生の年齢層は高めで、社会人の学生が新しい分野に対する教養を身に着け、キャリアアップを目指すために勉学に励んでいたり、若い頃に大学へ行く余裕のなかった方が日々懸命に研究を進めています。
このことから、放送大学はこれから社会に羽ばたく若い学生のためというよりは、社会経験者が己のキャリアにさらなる磨きをかけるために勉学に励む大学という色合いが濃いです。
そのため、全日制の大学のように同年代の同期とサークル活動やゼミを通して切磋琢磨するというようなことはほぼありません。
これだけ聞くと、やはり放送大学はあくまで”補習的な”大学だと思われてしまうかもしれませんが、ご安心を。放送大学はれっきとした正規の大学です。
放送大学は正規の大学?
もし全日制の大学へ進学する場合、その大学が「正規の大学」なのかということはあまり意識しないと思います。
ですが放送大学は通信制専門の大学、そして生涯教育を中心とした大学ということから、その実態についてあまり詳しく知られていないのが事実です。
放送大学卒業生としてここではっきりとさせておくとします。
放送大学は、文部科学省に設置認可された正規の大学です。
放送大学(大学院)は、学校教育法や大学設置基準等の関係法令に基づき、文部科学省に設置認可された正規の大学(大学院)です。
卒業(修了)すると「学士(教養)」(「修士(学術)」、「博士(学術)」)の学位が取得できます。放送大学公式ウェブサイトより引用:https://www.ouj.ac.jp/hp/toiawase/
このことから、放送大学を卒業し得られる学位は正式な学位として認められているので、決して「ただの修了証」ではありません。
ドイツでも放送大学の学位は有効!
一例ですが、ここで少しドイツに関する話をします。
ドイツで留学や就職をする際、日本と同じように卒業証明書や学位記を提出する必要があります。
このとき注意しなくてはいけないのが、自分の卒業した大学や学部がドイツの大学の学位と同等であるかどうかを確認する必要があります。
ドイツ国外(日本など)で修めた学位がドイツ国内で有効かどうかは、ドイツ連邦共和国各州文部大臣常設会議国際教育センター(Kultusministerkonferenz Zentralstelle für ausländisches Bildungswesen)が扱うデータベース、通称ANABINで確認することができます。
このデータベースで放送大学を調べてみましょう。
詳細を説明すると長くなるので要約しますが、放送大学はドイツ国内でA+というステータスを保持しています。
これはドイツ国内の大学卒業と同等性があるということを意味しています。
でもこれは東京大学卒業であったとしても同じことなので、放送大学が通信制だからというわけではないのでご安心ください。
話をまとめると、放送大学での卒業はドイツ国内でも有効な卒業として認められていることになります。
このことからも言えるように、放送大学は日本の文部科学省のみならず、海外の同等機関からも認められた正規の大学ということが言えるでしょう。
放送大学入学から卒業までに必要なこと
さて、放送大学では国内のみならず海外でも有効な学位が取得できるということがわかりました。
では放送大学での学生生活はどのようなものなのかをざっくりと紹介します。
放送大学への入学資格
放送大学への入学はとても簡単です。なぜなら入試がないからです。
放送大学は”すべての人へ開かれた大学”をモットーとしているため、入学に際して学力考査や面接などは一切ありません。
また、2学期制で4月と10月のどちらからでも入学することができます。
もちろん編入学及び他大学での既修得単位の認定も行えます。
実際に私も日本の他大学で取得した1年分の単位の認定を行い、放送大学は実質3年で卒業しました(論文執筆期間を含めると合計3.5年)。
入学金は24,000円となっています。
放送大学入学に際する要点まとめ
- 入試は一切なし。
- 4月、10月どちらでも入学可能
- 他大学等での既修得単位のトランスファー可能
- 入学金は24,000円
放送大学の卒業要件
放送大学を卒業するためには、所定の卒業単位数である124単位を習得し、4年以上在籍することが条件となっています。(最大で10年間在籍可能。)
他大学等で取得した単位が認定された場合、在籍期間を短縮することも可能です。
単位は毎学期末に行われる単位認定試験というものに合格する必要があります。
注意しなくてはいけないのは、この単位認定試験だけは試験会場まで足を運ばなければならないということです。
私も在学中は毎学期末に日本へ試験を受けに帰国していました。
放送大学の卒業要件まとめ
- 必須在籍期間は基本的に4年間(他の大学と同様)
- 4年間で124単位の取得を目指す。(最大で10年間在籍可能)
- 単位取得のためには期末に行われる認定試験に合格すること
- 講義の大半はどこでも可能だが、期末に行われる単位認定試験だけは全国にある試験会場でのみ受験可能
より詳細な卒業要件に関しては放送大学公式ウェブサイトを参照ください!
お金の話。放送大学卒業までにかかる学費
さて、ここまで放送大学の入学から卒業までの紹介をざっくりとしてきました。
さてここからは気になる学費のお話です。
日本の大学の学費はとても高いです。私立大学ともなると年間100万円近くかかることも。
欧州の大学を知っているとありえない金額です。
ちなみにドイツの大学は、州や学生協への加入等で多少の差はありますが学費はほぼ無料です。(かかったとしても1学期2万円程度。)
そんな学費の悩みも放送大学なら解決できるかもしれません。
なぜなら放送大学で卒業までにかかる学費は総額およそ70万6000円です。
これは4年間の在学期間全ての総額です。ここまで学費が安い大学は日本には恐らく無いでしょう。
この総額約70万円は、入学料24,000円と授業料の合計です。
授業料は、1単位ごとの計算となります。放送大学では1単位あたりの授業料が5,500円となっています。
これを124単位取得する必要があるので、
1単位5,500円 x 124単位 + 入学金24,000円 = 706,000円
となります。
放送大学から新卒就職を目指す上で大切なこと
放送大学は入学のハードルが限りなく低く、学費も他の大学と比較して格安なので誰もが入学しやすい大学ともいえます。
しかしながら、すべての通信制大学に共通して言えることですが、全日制の大学や出席義務のある講義と違い、卒業までのプラン立てや単位の計算をすべて自分で管理する必要があります。
通信制大学は、「場所と時間の自由」がある代わりに、学生生活の管理を全て自分で行わなければなりません。
サボるも自由、能動的に勉学に励むも自由です。そのため、卒業までにどれだけ努力したかで得られるスキルや経験に大きな差が生じます。
通信制大学を卒業しただけでは新卒は難しい
また、通信制大学の最も大きな短所でもある「ブランド力の低さ」は、他の全日制大学を卒業した学生や転職者と並んだときに大きく不利になります。
もちろん通信制大学の質に問題があるわけではありませんが、世間では(特に日本では)通信制大学を下に見る風潮が少なからずあり、これが原因で通信制大学からの新卒就職や転職の壁がとてつもなく高くなっているのが現状です。
一つ明らかなのは、単に通信制大学を卒業しただけで新卒就職は難しいでしょう。履歴書だけで脚切りされることも考えられます。
しかし通信制大学卒業をフルに活かして次のキャリアへ繋げる方法はもちろんあります。
放送大学を卒業して海外新卒就職を実現した私が考える、通信制大学卒業から新卒就職を目指すために必須の2つのことは以下のとおりです。
通信制大学+αで経験を積むこと
通信制大学から新卒での就職を本気で目指すのであれば、大学卒業のみを目指すのではなく、+αで経験やスキルを積むことが必要です。
この+αというのは、大学で学ぶことと並行してさらに自分のスキルを高めることを意味します。
先ほどもお伝えしましたが、通信制大学では「時間と場所の自由」があります。この利点を最大限活用して、大学卒業までに自分のスキルを高めます。
例として挙げられるのがインターンシップです。時間が拘束されない通信制大学ならではの長所を利用して、長期のインターンシップ等に取り組むことをおすすめします。
特に海外での就職を目標にしているのであれば、その目標の国での社会経験やインターンシップをすることを強くおすすめします。
この経験から得られるスキルや証明書は、就職活動において通信制大学の学位よりも遥かに強い武器となります。
通信制大学+αについて詳しくはこちらの記事で紹介してます。
卒業論文や卒業研究に必ず取り組むこと
他の通信制大学における卒業論文の有無はわかりませんが、放送大学では卒業研究という名目で卒業論文に取り組むことができます。
「取り組むことができる」とあえて書いたのには意味があります。なぜなら放送大学では卒業論文が卒業のための必須課題ではないからです。
卒業に必要な必須単位である124単位を修得した場合、卒業研究なしで卒業が可能という意味です。
しかしながら、卒業論文や卒業研究無しの卒業では、就職の際にその弱さが露呈します。
日本ではあまり問題はないのかもしれませんが、海外を目指すのであれば、卒業論文は必ず執筆しましょう。
欧州では論文=大学生活の集大成
欧州の大学では大学生活の集大成として論文を書き上げることが一般的だからです。
「大学は研究をする場所」という理解が一般的なヨーロッパでは、論文なしの卒業は基本的にありえません。なぜなら論文がないということは大学で何も研究をしてこなかった=勉強した記録がないというように見られるからです。
単位制が主流のアメリカでは卒業論文に対する捉え方が異なるので、卒業時の論文の有無はそれほど重要ではないこともあるとは思いますが、ヨーロッパでのキャリアを目標にするのであれば、論文は必ず書き上げましょう。
ちなみに、専門性の高い分野での仕事や研究職を除いて、論文の評価や大学の成績はそこまで重要視されません。(至って標準的な成績でしたが、私が経験した複数の海外面接で成績は一切話題になりませんでした。)
通信制大学の卒業研究ゼミは経験豊富な人がたくさんいる
通信制大学には数多くのバックグラウンドを持つ社会人や研究職の方がたくさん在籍しています。
そして卒業研究に取り組む場合、こういった経験豊富な「同期」とともに同じゼミで情報交換や討論をすることが可能です。
私の参加したゼミにも公務員や企業の管理職の方や国家資格を持つ社会経験豊富な方がいました。
このような人生の先輩とも言える方とともに同じゼミに参加し情報共有ができるのは、生涯学習を基本とした学生の年齢層が厚い通信制大学ならではの強みだと思います。
社会経験の乏しいひよっこの自分では気づけない重要なことを、有識者や事情に精通した同じゼミの仲間に共有することによって見つけることができます。
同年代が集う全日制大学のゼミ(少なくとも学部レベルのゼミ)ではこのような経験は難しいでしょう。
また、担当教官である教授もエキスパート揃いです。放送大学では、大学専属の教授以外の外部講師が教鞭を執っています。
そしてこの外部講師の多くは、他の大学で教鞭を執っている教授です。東京大学や京都大学をはじめとする名門国公立大学や私立大学からの講師も数多くいます。
こういった教授のもとでの論文執筆も、特定の条件が認められた場合可能です。自分の研究テーマに見合った教官を探すことができる機会は、学部レベルではなかなか珍しいと思います。
私の担当教官は放送大学専任の教授でしたが、海外からのゼミ参加もオンラインで対応してくださり、とても手厚くサポートをしていただきました。
さいごに
通信制大学は世間であまり評価されない傾向が強いということをお話しましたが、だからといって就職に全くつながらないということはありません。
大切なのは、通信制大学の最も大きな利点である「場所と時間の自由」を最大限活用して、通信制大学+αをどこまで充実させるかということです。
就職活動で最終的に評価される点は、いかに自分のスキルが高いかということであり、これは海外では特に重要視されます。
もっと簡潔に言うと、就職先でどの程度即戦力になれるのかということです。
これを証明するためには大学のカリキュラムだけでは足りません。これは通信制大学以外の大学に通っていたとしても言えることだと思います。
差をつけるには、在学中にとにかく自分のスキルを磨くことです。通信制大学の場合、大学名で過小評価されがちのため、自分の努力をいかにアピールするかが最大の鍵となります。
ですが通信制大学には自分を高めるために必要な時間と場所の制限がなく、可能性は無限大です。しっかりと考え行動すれば、他の大学のライバルにも引けを取らない、もしくはそれ以上のスキルを在学中から身につけることができます。
結局は自分次第ということです。ですが自分を高める機会は通信制大学のほうが全日制の大学よりも多くあると思います。
受動的に学ぶのではなく、能動的に自らの目標に向かって経験を積めば、通信制大学からでも新卒就職、はたまた海外就職も可能です。自分がそうだったのでここで断言します。
そして自分が経験してきたことは必ずどこかで評価されます。諦めずに目標に向かい続ければ通信制大学卒業でも必ず将来につながります。
それではお読みいただきありがとうございました!
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは(^^)!
放送大学に入学を考えてる高卒社会人(20代)です。
放送大学卒業後も海外就職が可能なのかググってるところ、’なっしゅさんのblogに辿り着きました。大学ではどのコースをとっておりましたか?
コメントありがとうございます。
私は社会と産業コースを選択しました。
経営学や経済学、会計などが体系的に習得できるのでおすすめです。