海外就職や転職となると、必ず必要になるものが語学力です。
しかしいくら多くの外国語を運用することができたとしても、海外でそれはただの前提条件の一つでしかありません。
外国語が使えるということは、海外で仕事をする上で重要なツールでしか無いのです。
例えば私が住んでいるドイツでは、ドイツ語はできて当たり前。なぜなら現地の人はみなドイツ語を話せるからです。
しかしこれはあくまで海外にいる現地の「人」という支店からの捉え方です。
見方を変えれば、現地にいる日本人としてその国の言葉を運用できる人と見ることもできます。
そうなるとその人に対する評価は少なからず上がります。
日本人でありながら現地の言葉を運用できる人材となると、その強みを最大限発揮できる仕事はほぼ決まってきます。
それは日本と関わりのある仕事に就くこと、または始めることです。
この記事では、外国語を運用することができる日本人として海外で仕事を探す際の大切なこと、
そしてどのようにして「自分が日本人であることを強みとして海外での仕事に活かす」ことができるのかについて話をしていきたいと思います。
外国語は特技としてではなく、一つのツールとして捉えること
何かしらの外国語を運用できる能力はとても貴重です。
もちろんこの外国語には英語も含まれています。
日本でも小学校からの英語教育が導入されたりと、私が子供だった頃よりもより「国際教育」に力を入れているように感じます。
しかしやはり世界的に見ると、日本人の外国語運用能力は未だ低いレベルであると言えます。
特にこれが理由でということではありませんが、海外で仕事をしていると日常的に実感します。
ですがこれは日本人が外国語を勉強していないからだとは思いません。
日本人が他言語を学ぶときは、1から学ばなければいけないことがとても多いです。
するとどうしても他国の人と比較して修得速度に差が出てしまうことは仕方のないことなのです。
個人的な意見ですが、やはり日本語という特殊な言葉を母国語として話している以上、同じアルファベットや類似の文法で構成されている言語を話している欧米系の国の人とは単純に比較することはできないと思います。
ですから例えばアメリカ人と日本人がよーいドンでドイツ語を学び始めたら、基本的にはアメリカ人のほうが早くドイツ語を習得することでしょう。
また欧米の国は多文化で外国語にも寛容です。1家庭内で複数の言語を使っている家族も普通にいます。なので母国語以外の言葉に対して自然と抵抗が少なくなっています。
日常に自分の言葉以外の言葉があることが普通なのです。
日本では外国語が一つの大きな特技として認識されている
こういう背景もあって、日本では日本語以外の外国語を話すことができると一目置かれる場面が多々あります。
そして、大学等で外国語をある程度勉強していた場合、就職先でその培った外国語能力を生かして仕事をするというケースも多いと思います。
日本では、外国語が使えること自体が大きなスキルとして認識されています。
もちろん、いろいろな外国語を運用できるということは能力として評価されるべきことですし、高いスキルとして認識されることは間違ってはいません。
しかし、海外就職となるとそうはいかないのが現実です。
海外では外国語は特殊スキルではなく「ツール」として認識されている
先ほども書いたように、海外の国では母国語以外の多言語に対して比較的寛容で、2ヶ国語話者であるバイリンガルはごろごろいます。
例えばドイツで大学進学を目指す学生は、高校生ながら学校で英語 + もう一言語を勉強します。
文系の学生に至ってはさらにもう1言語、つまり英語 + 外国語 + 外国語ということになり、マルチリンガルの領域です。
ドイツ語 + 英語 + フランス語 + スペイン語みたいな感じです。
このように外国語が達者な現地人がひしめく海外で、日本語 + 英語/その他の言語 ができたところで、外国語運用能力のみを強みに挑むのは至難の業です。
私が大学生なりたての頃も、ドイツ語だけしか見ておらず、この事実に直面したのがドイツの大学に入学してからでした。
「ドイツ語だけではドイツで飯は食えない。」
そう気づいたのがドイツ留学中。自分でとても後悔しています。
海外を目指すのであれば、「外国語は特殊スキルではなく一種のツール」ということにもっと早い時点で気づくべきでした。
外国語だけで飯が食べられるのはほんの一握りだけ
もちろん外国語の知識だけで生活をしていくことも不可能ではありませんが、なかなかハードルが高いです。
その方法としては、同時通訳の専門家や外国語もしくは海外文学の研究者として仕事をしていく方法がありますが、狭き門です。
まず通訳として仕事を確立するためにはかなりの語学力が必要です。そして通訳者になるためには、強大なライバルと競争する必要があります。
それは子供の頃からバイリンガルやマルチリンガルとして育ってきたネイティブの人です。
複数言語を母国語として運用できる人と対等もしくはそれ以上の語学力を身につけることはとてもハードルの高いことだと言えます。
もちろんその壁すらも超えて活躍する方々がいますが、並大抵の努力ではここまで到達できません。
また、研究職も同じです。大学や研究所などでの勤務となると、その門はかなり狭いです。
こういった職に就いて外国語で生活している人たちをとても尊敬します。私には無理です。
では、こういった専門家以外の道を進み海外就職する上で大切なことは何なのか。ここから説明していきます。
海外就職を目指すのであれば日本人としての自分を強みにできる仕事を探す
海外で就職を目指す場合、大切なのは外国語能力やスキルだけを強みとして見るのではなく、「日本人としての自分自身」を強みにできる仕事を探すことが最も理にかなっていると思います。
抽象的な表現で理解しにくいので、もう少し噛み砕きます。
もしあなたが外国語を強みにして海外で活躍したいと思っているのであれば、「日本人として外国語を運用できる人」であることを強くアピールするということです。
日本人として外国語を運用できる、もしくは就職先の国の現地の言葉が話せる人材は希少です。
そして、そういった人材を求める企業は多くの場合、日本と関係のある現地企業か、現地日系企業となります。
日本と関係のある現地企業とは
日本との関係というのは、日本の顧客と取引をしている、または日本に支社がある現地法人など、何かしら日本と関わりを持っている企業を指します。
このような企業の場合、日本の商習慣や文化、そして日本語を母国語として運用できる人材を求めるケースが多いです。
というのも、やはり仕事をする上で大切なことは、「仕事のあり方を理解する」ということで、これにはたった今例に上げた商習慣などが含まれます。
外国語能力云々よりも、仕事のあり方を初めから理解している人(日本と関わりを持っている企業であれば日本人)を実戦投入したほうが、成果に直結するスピードが格段にアップするため、企業もそうした人材を求めています。
もちろんそういった企業で仕事をするためには外国語能力も必要ですが、あくまでツールとして外国語を運用することができるレベルで問題ないのです。
この点、通訳者や研究者よりもハードルは低くなり、仕事も見つけやすくなります。
現地にある日系企業
私の場合もそうですが、日系企業の現地法人に就職するという方法もメジャーです。
説明する必要もあまりないとは思いますが、組織自体が日系の場合、日本人としての活躍できるフィールドが広く存在します。
現地にある日系企業に就職する場合でも、重要視されるのは外国語運用能力よりも、その国での「仕事のあり方」に対する理解となります。
やはり大切なのは外国語能力よりもその国に特化した「仕事のあり方」に対する理解です。
日本人として現地の商習慣や言葉を理解している人材はあまり多くなく、日本本社との架け橋となるような職種を任される場合もあります。
繰り返しになりますが、このとき重要なのは双方の国のシステムを理解していることです。
「郷に入ったら郷に従え」というように、ビジネスにおける商習慣も国によってそれぞれです。
したがって、両方の国(就職先の国と日本)の商習慣に対する理解や経験は、海外就職する際に外国語よりも重要視される傾向が強いです。
海外で日本人としての自分自身を強みとして活かすこと=日本人として海外の文化を理解すること
ここまでの話をまとめると、海外就職において日本人としての自分自身を強みとして活かすためには、外国語運用能力よりも、自分が就職を目指している国の商習慣や文化を理解することが最も大切だということになります。
もちろん外国語運用能力も必要です。なぜならその国の商習慣や文化を理解するためには、その国の言葉を運用できることが前提条件であるからです。
海外における外国語運用能力は、「その国の文化を理解するため、そしてコミュニケーションを図るためのツール」であって、外国語能力それ自体はあまりスキルとして認められないということです。
得意な外国語を用いてその国の文化を深く理解している日本人ともなれば、海外では貴重な人材として扱われることでしょう。
現地人として現地のために働くという仕事は難しい
現地企業で、現地市場のために、現地の人と同じように働くということはとてもレベルが高いです。
もちろん全く日本と関わりを持たない現地企業で活躍している方もいますが、私から言わせると彼ら/彼女らは「スーパーマン」です。
とてつもなくレベルの高い語学力と、決して折れることのない鋼の心が無い限り、仕事をする環境としては超上級です。
というのも、日本と何かしらの関係がある企業や日系現地企業の場合、「日本人としての自分を活かすこと」が比較的容易です。
日本と現地の商習慣や文化を少なくとも半々程度理解していれば問題はないです。
しかしながら完全なる現地企業で働くということは、その国の現地人としての完全なる振る舞いを要求されるということです。
私もドイツでの職業訓練中、完全なるドイツ系企業(とはいっても輸出部配属で日本の顧客を少し相手にしていたが。)で働いた経験がありますが、その国の商習慣やスタイル、立ち振舞などを理解するのはとても時間がかかりました。
私は職業訓練生としてその会社に勤めていたので、全ては勉強のためと割り切ることができましたが、これが正社員採用で生活がかかっているともなればなかなか大変なことだと思います。
さいごに
「海外就職を目指すのであれば、自分自身が日本人であるということを強みとする」というテーマで話をしてきました。
「日本人であること」というのは、日本語を母国語としていて、日本の文化や習慣についてネイティブとして理解しているということです。
目標の国の言葉を、その国の文化や商習慣を理解するための「ツール」として使用することで、より現地での仕事に必要な知見を広めることができ、海外で働く日本人としての自分自身を強みにできる、ということです。
もっとまとめると、生まれ育った日本の文化と目標の国の文化を双方とも理解していて、さらにその国の言葉を話すことができるのなら海外就職で大きな力になるということです。
外国語はあくまでコミュニケーションツールです。外国語だけができたところで仕事はほとんどありません。
ですが外国語ができるということは決して無駄ではありません。むしろ外国語は他国の文化や商習慣を理解するための最低条件となる「ツール」です。
だからこそ自分が運用できる外国語を利用して、その国の文化に対する理解を持ち合わせた日本人となることが、海外就職のための重要な鍵となります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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