今回始めてオーストリアビールを紹介する、なっしゅです。
ドイツの南、アルプスに位置する国オーストリア。
ドイツと同じくドイツ語を公用語としており、文化も南ドイツ地域とほとんど変わりありません。
ということは…
ビールの文化も非常に発達していて美味しいビールがたくさんあるということです!
今回はオーストリア国内でメジャーなビールの一つである、Zipfer(ツィプファー)のMärzen(メルツェン)を紹介していきます!
Zipfer Märzenの紹介
Märzen(メルツェン)とは
Zipfer(ツィプファー)の紹介に入る前に、Märzenタイプのビールについてさらっと紹介しておきたいと思います。
Märzはドイツ語で”3月”を意味しています。
Märzenという名前の通り、3月に仕込みを始めて長期間熟成させるためにアルコール度数を高めにしたビールをMärzenとしています。
ではなぜ3月に仕込みを始めていたのか。
これは、保存技術や冷却技術が乏しかった昔、4月から9月までの間はビールの醸造が禁止されていたことが理由です。
とはいっても、醸造中で寝かしておくことは問題なかったため、3月に仕込みを始めてアルコールを強めにすることで、ビールを長期間保存に対応させたことがきっかけです。
また、夏の期間に醸造が禁止された理由としては、醸造の下準備で原料を煮る(ホップと混ぜて煮沸する)際の火災防止のためとも言われています。
Märzen(メルツェン)ビール=3月ビールです。
そしてMärzenタイプのビールで有名なのが、オクトーバーフェストビールです。
というのも、春先から仕込んでいたビールが秋にかけて完成するため、秋に最も多く量があったことが由来だと言われています。
カテゴリー的には下面発酵のラガービールの仲間で、ヘレスやピルスナーの仲間です。
今日ではより色味の薄いMärzenが主流となっているため、ヘレスと同じカテゴリーに分類されることが多いですが、ヘレスよりもホップ感が強めです。
色で区別するならヘレス寄り。風味で区別するならピルスナー寄り。それがMärzenです。
さて、それではZipfer Märzenの紹介に戻りましょう。
生産地
Zipferの醸造所はオーストリア北部に位置するOberösterreich(オーバーエスターライヒ)州の州都Linz(リンツ)郊外にあるZipf(ツィプフ)で造られています。
ZipfのビールだからZipfer。いつもどおり地名=ブランド名です。
Zipf近郊の都市Linz(リンツ)はオーストリア国内で首都であるWien(ウィーン)、Graz(グラーツ)に次ぐ3番目に大きな都市として知られています。
Zipferの創業は1858年。創業当初から近代的な生産技術を取り入れ、オーストリアにおけるメジャービールの座を維持し続けています。
それではグラスに注いでみます。
見た目
グラスに注いだ瞬間からホップの香りが漂います。
とはいってもチェコ産ピルスナーほどではないです。
きれいに透き通った黄金色で、見た目はかなりピルスナーよりです。
試しにミュンヘンビールでおなじみ、Paulaner(パウラーナー)のHelles(ヘレス)とOktoberfestbier(オクトーバーフェストビール)の2つと見た目を比較してみましょう。
Paulaner Oktoberfestbierについて詳しくはこちら!
同じMärzenタイプということで、Zipfer MärzenとPaulanerのOktoberfestbier(オクトーバーフェストビール)はかなり似た色合いです。
対してHelles(ヘレス)と比較してみると、色の濃さが一目瞭然ですね。
Märzenのほうが明らかに黄色みが強いことがわかります。
(まあそうでないとヘレスとおなじになってしまうので当たり前といえば当たり前。)
泡立ちは双方とも変わらず、ラガービールの特徴をしっかりと継承しています。
泡立ち良好。すぐ消える。
さて、実際に飲んでみましょう。
味
Märzenなので風味はかなりピルスナーに近い印象を受けました。口に含んだ瞬間からホップの爽やかな苦味がいっぱいに広がります。
しかしピルスナーと異なるところはそのホップ感が強くずっと残るのではなく、中盤から後半にかけて僅かですがモルトの香りがふんわりと追いかけてきます。
そしてそのモルトのコクとホップ感がいい感じのキレを生み出します。
最後は下の上に淡くホップの苦味が残ってゆっくりと引いていく感じです。
ヘレスのようなモルト感を全面に押し出した感じでもなく、ピルスナーほどホップ感を強調した味でもない、まさにヘレスとピルスナーの中間、メルツェンの味です。
思ったのが、やはりオクトーバーフェストビールはミュンヘンビールなので、ZipferなどのMärzenと比べると、よりモルト感とコクが強いと感じました。
本来のメルツェンはもう少しホップ感が強いものなのだと改めて認識。
Zipfer Märzenビールレポート
ビール好きの筆者なっしゅによるZipfer Märzenの独断レビューです。
ビールカテゴリー – Bierstil | メルツェン(Märzen) |
アルコール度数 – Alkoholgehalt | 5.0% |
麦汁比重 – Stammwürze | 11.8% |
発酵種類 – Gärung | 下面発酵 |
カロリー(100ml) – Brennwert | 172 kJ / 41 kcal |
原材料 – Zutaten | 水・大麦・ホップ・酵母 |
Zipfer Märzenはミュンヘンのオクトーバーフェストビールを代表とするミュンヒナーメルツェンよりも、ホップ感が強めでコクが抑えられているメルツェンです。
アルコール度数は5.0%といたって標準的です。
メルツェンはアルコール度数が高めと冒頭で説明しましたが、現代において高いアルコール度数のビールはあまり好まれない傾向が強いので、風味そのまま、アルコールは弱めに設定していることが多いです。
それでもオクトーバーフェストビールは当時の文化を継承しているのか、アルコール度数は平均6%でやや高めですが。笑
このように当時より低いアルコールで同じ味を再現できるのも醸造技術の賜物ということですね。
まとめ
Zipfer Märzenはヘレスとピルスナーの中間的な味で、ホップ感もモルト感もうまく両立できているすっきりとした後味が特徴的なビールです。
特にこれといった変わったクセもなく、オーストリアメジャービールとして人気を博している理由がわかります。
バイエルンを中心とする南ドイツ地域では圧倒的にヘレスが好まれていますが、国境を超えてオーストリアに入ると、販売されているビールはメルツェンタイプが多くなります。
ヘレスとメルツェンはもともとは全くキャラクターの違うビールでしたが、昔と比較するとアルコール度数もヘレス並みになり、色もよりヘレスのように明るくなったがために、メルツェン=ヘレスといってもほぼ間違いではなさそうです。
それでも、味はメルツェンのほうがホップ感が強いのが特徴なので、個人的には、
ヘレス≒メルツェン≒ピルスナー
としてそれぞれが持つビールキャラクターを楽しんでいきたいと思います。
オーストリアへお越しの方は是非一度お試しください!
オーストリアではメジャービールなので比較的どこでも手に入ると思います。
ヘレスやメルツェンなど、ラガービールを楽しむのに最適なグラスはこちら!
16世紀からの歴史を誇るバイエルンのグラスメーカー、Spiegelau社製のグラスです。
稀代の天才音楽家であるモーツァルト生誕の地であり、当時本人も愛飲していたと言われるオーストリア、ザルツブルク産ビールStiegl Goldbräuの紹介はこちら!
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!
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